芹沢光治良の位置
前回はカトリシズムという観点から芹沢光治良を論じた『須賀敦子と9人のレリギオ』を紹介しましたが、今回は『天啓のゆくえ
宗教が分派するとき』(弓山達也 日本地域社会研究所 2005年3月31日) をとりあげてみたいと思います。
「昭和二十年代まで、近代日本における最大の宗教団体であった」天理教は、多くの分派を生み出したことでも知られているそうで、その分派分立の特徴と背景、救済論の変遷、新宗教における分派分立の諸要因を考察するというものです。このなかで「芹沢光治良の晩年と天理教」という独立した章で論じられています。
弓山氏は、天理教を中心とした影響関係を無視して晩年の芹沢光治良をめぐる神秘体験は理解できないとして、その境地にたどりつくプロセスを天理教の分派分立史から解明しているのですが、同時につぎのようにも指摘しています。
天理教の親神を大自然の力やエネルギーとしてとらえる光治良の到達した境地は、天理教のこれまでの分派分立史にはなかったモチーフといえよう。そこにはむしろニューエイジ運動にみられる世界観と共通するものがある。
ニューエイジ運動とは、
一九六〇年代のアメリカのベトナム反戦運動、環境保護、黒人解放・女性解放・民族的な少数者の解放などの人権運動に端を発し、それに経済、医療、政治、科学などのさまざまな分野を巻き込みながら、今の人々の意識や社会のあり方とは全く異なった新たな世紀の到来を目指す潮流といえよう。
また、自己自身の意識をより高いレベルにまで変容させ、「宇宙意識」に融合させていく新霊性運動(島薗進)の特徴として
1) |
意識変容 |
2) |
自然や人間の内にある神的なものや霊的なものの重視 |
3) |
近代合理主義的な物質文明を越える霊的文化への移行 |
4) |
教団型の宗教ではなく個人の霊性の開化 |
5) |
宗教(霊性)と科学との合致 |
が紹介されていますが、このような運動への接近にも注目しているようです。
たしかに、天理教関係の影響は否定も無視もできないものではあるのでしょう。
この書籍は一昨年岩部一宏氏に紹介されたものでした。岩部さん、また読書会にも顔をだしてくださいね!
(2008.02.11)
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