― しあわせへの道しるべ ―

芹沢光治良の文学の世界を ささやかながら ご案内いたします。新本、古本、関連資料も提供いたします。

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Serizawa Kojiro

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『神の微笑』文庫化によせて――読者の声

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13
『神の微笑』との対話
12 遠い日の記憶が甦る
11
新たな <芯> が芽生えた
10
自殺願望からすくわれた
9
文庫化に賛辞をおくりたい
8
私は心の中で叫びました!
7
平易で、なくなめらかでわかりやすい文体
6
とらわれないことの むずかしさ
5
これは希望の書だ
4
一気に読ませる面白さ
3
完全にとりこになりました
2
胸の動悸が治まらない
1
感謝できるようになりました
注釈
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『神の微笑』文庫化によせて――読者の声

5) これは希望の書だ

『神の微笑』の初版が出版されたのが1986年の7月だから、もう18年近く前の事になる。作家芹沢光治良の久々の「書き下ろし」なので少々ワクワクしながら、表紙をめくった事を、今でも思い出す。

先ず最初に眼に飛び込んできた文章が「文学は 物言わぬ 神の意思に 言葉を与えることである――」という一文だった。これは私にとって大変インパクトのある言葉で、エクリバン精神の真髄をあらためて識らされた気がした。

ページを読み進むにつれ、芹沢文学の世界にグイグイと引き込まれて、一気に最終章まで読破した。

このあと毎年一冊のペースで出版されて神のシリーズとして世に出て、多くの読者を魅了したという。この作品群は、これまでの文学の範疇を超えて、全く新しい分野を切り拓いた感がある。

それまでにも、ファンタジー小説やシュールレアリスムの世界をあらわした文学作品が数多くあったが、これまでの文学の規格には到底納まりきれない「物語」を大胆かつ繊細に描いている。

あの良識的文学作品を多く著した作家とは思えないほどに、それでいて、読者に「生きる」とは何かを強く考えさせられる作品に仕上がっているから不思議だ。

そして、こうした小説にありがちな、オカルト的な臭いを感じさせないのは、作者の卓越したバランス感覚に支えられていることに読者はすぐに気付くだろう。

光治良のスタンスはとても明確で解かりやすい。それは、次の作者の言葉で、より鮮明になる。

「一宗派に帰依するよりも、自由人として真理をもとめて、それが滅びの道であっても、それを選びたい」

それが滅びの道であっても、自由人として生きる……

なんと強い精神の持ち主だろうか。

また、作者自身が実証主義者らしく具体的に不思議な体験をありのまま表現している事も、読者を最後まで裏切らないで、安心して読み通させることが出来るのだと思う。

そうだ『神の微笑』の読後、最も印象に残った事といえば、有史以前から人類がいだいて来た神に対する観念を、光治良が鮮やかに変えてしまったという事だ。

旧約にあるような人間を審判したり、罰する恐い神から、光治良の説く新しい神は、人類(生きとし生けるもの全て)に対して、慈愛あふれる優しさの対象としての神に言及していることだ。

あたかも、人間の親が、我が子を宝子のように育てる母をイメージさせる。

これはまさに、閉塞した今の世に生きる人への希望の書、あるいは福音の書となるにふさわしい書物になるのではないか。それが、作者自身の願い(祈り)なのかもしれない。

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Serizawa Kojiro
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※ リンクがはずれている箇所を発見されたら、ご一報くだされば幸いです。(2004.11.04)