― しあわせへの道しるべ ―

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作品紹介 「グレシャムの法則」
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作品紹介「グレシャムの法則」

(愛知県 M・M)

[75] M・M [東海] 2004/09/16(Thu) 23:52
「芹沢光治良文学愛好会」掲示板・発言分

先月29日、芹沢文学沼津の会の、A様(静岡県袋井市)のお宅におきまして沼津と名古屋の合同読書会が行われました。13名の出席で、昨年の「鈴の音」に続いて2回目になります。今回は昭和9年12月「行動」に発表されました「グレシャムの法則」でした。

地道な研究家肌で、貧困家庭にも手厚い医療を心掛ける深水医師。脳細胞の、より効果的な染色法を研究しつつ、妻と二人で自宅の一部を改造した質素な診察室で血の通った治療を施します。一方、入院設備の整った立派な建物に、看護婦、お抱えの俥夫も雇う新米の山田医師。高級住宅に住む患者を得意とし、薬や注射も必要以上に使い、産婆を利用して、若い母親にも巧みに宣伝します。

こうして山田医師は、自分の拙い医師としての腕前とは裏腹に、患者やその地域に住む人々の心を掴みます。良心的で腕の良い深水医師は、患者もほとんどいなくなります。そのうえ、山田医師の長男が疫痢に罹り、治療を深水医師に頼ってきますが、その息子は既に手遅れの状態で、その夜手当てのかいもなく死亡、いつのまにか深水医師にかかって死亡したと世間の噂になります。

「悪貨は良貨を駆逐する」グレシャムの法則。駆逐された良貨は再び、日の目を見ることができないという法則でもあるそうですが、昭和9年という年代を考えますと、国民は戦争に巻き込まれ、気がついたときには、人間として大切なものを失ってしまう、取り返しのつかないことになると、この作品は警告しているのではないでしょうか。

いつの時代にも、一人ひとりが確かな判断力と、高い意識をもつことの重要性を教えられました。

今回の読書会であらためて感じましたのは、一人ひとりの感想と、作品の書かれた時代背景を繋ぎ合わせると、思いがけないテーマが浮かびあがってくるということでした。

「医は仁術」の深水医師、そして「医は算術」の山田医師の両者を、表現している一文がありました。文中、林扶美子らしき女流作家の「お宅の先生は謂わば、お医者さんの方の純文芸作家よ。山田さんは大衆作家よ、屹度。儲からなくたって、愚痴を云っては駄目、駄目。それが純文芸作家の運命じゃないこと?」

この読書会の冒頭、K・G氏が芹沢先生の古書を十数冊持参され、出席者全員に、くじ引きでプレゼントがあり大好評でした。そして締めくくりは、H・Sさんのタクトでピアノに合わせて「ふるさと」等の合唱で、「ミニ我入道の集い」は終わりました。

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